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2017/04/12《ミサ・ソレムニス》推薦の言葉−平野 昭(ベートーヴェン研究・元慶應義塾大学教授)

《ミサ・ソレムニス》自筆譜ファクシミリ版

平野 昭(ベートーヴェン研究・元慶應義塾大学教授)

すばらしいフル・カラーのファクシミリ版によるベートーヴェン自筆スコアが出版された。ベートーヴェンの最高傑作と言って過言でない《ミサ・ソレムニス》Op.123の作曲スコアだ。1819年春から1823年3月までの丸4年間を費やした創作過程を跡付ける現存する自筆スコア・スケッチ(消失したグローリア章以外のキリエ、クレド、サンクトゥス=ベネディクトゥスそしてアニュス・デイの4章)が一巻にまとめられた。
 《ミサ・ソレムニス》の作曲時期は最後の3曲のピアノ・ソナタ(Op.109〜111)、《ディアベッリ変奏曲》Op.120、そして「第九」交響曲Op.125と完全に重なっており、多くのスケッチ帳が使われている。今回のこのファクシミリは、いわば創作過程を復元したものであり、使用されている五線譜はシステム(5線の段数)や紙幅なども異なり、創作時期の違いをはっきりと示している。切り貼りページがあり、ナイフで削ったような訂正箇所があり、一端破り取ったページを後から修正を加えて再び縫い閉じるといった壮絶な創作のプロセスが見て取れる。スムーズに筆の進んだ段落、何度も同じ個所で削除、改作、変更、追加などを見るにつけ、ベートーヴェンの苦悩やミサ曲に対する真剣で真摯な姿勢が生々しい筆致の楽譜から見えてくる。
 
 《ミサ・ソレムニス》は時のオーストリア皇帝の実弟にしてベートーヴェンの唯一の作曲の弟子でパトロンでもあったルドルフ大公がオルミュッツ大司教に就任する式典で演奏されるためにベートーヴェン自ら献呈を申し出た作品だ。

「帝国大公殿下(I.K.H.と略記=Ihro Kaiserliche Hoheit)のこのたびのご栄誉を他の者同様にわたしも祝辞申し上げたく思います。・・中略・・殿下の就任式典に際しまして私の作曲いたします荘厳ミサ曲(Hochamt)の演奏が許されますならば、その日こそ私の生涯でこの上なく最良の日となりましょう・・後略・・・・・」(恐らく1819年3月3日。Beethoven Briefe(1996)書簡番号 BB1292)

 ベートーヴェンはすでに1807年にエステルハージ侯爵ニコウラウスの委嘱で同じ通常文5章による《ハ長調ミサ曲》Op.86を作曲していたが、《ミサ・ソレムニス》の作曲に際しては改めて古い様式のミサ曲を研究し直している。グレゴリオ聖歌やパレストリーナの対位法様式、ヘンデルのオラトリオ《メサイア》、ハイドンがウィーンで作曲し初演した《戦時のミサ曲》Hob.将将供州掘▲癲璽張.襯箸痢團譽イエム》K626、そして恐らく、まだ出版される前のJ.S.バッハの「ロ短調ミサ曲」BWV232の筆写譜も見ていたと考えられている。
 各章の通常文の教義上の意味を熟考し、ミサ典礼文の内容に従って楽段や楽句を変え、「サンクトゥス」と「ベネディクトゥス」を繋ぐプレルーディウムの神秘的な響き、ベネディクトゥスに優しく寄り添うヴァイオリン・ソロ、「アニュス・デイ」の後半で「われらに平安を与え給え(ドナ・ノービス・パーチェム)」の祈りの背後に響く軍楽の意味を考える上で、ベートーヴェンの長い難産の生々しい経過を示すこの自筆ファクシミリは眺めるほどに涙が出てくる思いだ。
 多くの自筆スコアを見てきたが、《エロイカ》や《運命》そして「第九」交響曲とは比較できないほどベートーヴェンの推敲と熟考、苦悩の深さと大きさを伝える《ミサ・ソレムニス》の音楽作品としての偉大さを感じ取ることができる。ベートーヴェンはこの作品を出版社に売り込むに際して、次のような書簡を残している。

「独唱と合唱を伴う新しくて大規模の荘厳なミサ曲を1000フローリン、そして、(私の合唱を伴うピアノ幻想曲の手法による※)終楽章をもつ新しい大交響曲、シラーによる広く知られた不滅のリート〈歓喜に寄す〉の歌詞による独唱と合唱を伴う終楽章をもつ大交響曲、これを600フローリンで提供できます」(1824年3月10日、ショット社宛て。書簡番号 BB1787)。